音色に恋して2

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 驚いた加嶋は桜間の腕を引いて、レッスン室に入っていく。当たり前だが、そこに黒江の姿はない。 「どーした?」  優しい声で聞いてくれる加嶋。 「・・・・」 「黒江先生に何か言われた?」 「っ~~~~」  黒江の、勝手にしろ、と言った言葉を思い出し、余計に涙が零れてしまう。  なんとか耐えようと手の平を握ったり、唇を噛み締めたりするけれど、涙は止まってはくれない。 「当たりか・・・」 「す、すみませ、」 「いいって、謝らなくて。俺もよく怒られて泣いてたわ」  あの人、言うこと厳しいからなぁ。根っからの音楽バカだし。 「でもサックス死ぬほど上手いから、より腹立つんだよな」  はぁ、と溜息をつくが、それはどこか演技くさくて。頑張って慰めようとしてくれているのが分かり、尚更申し訳なくなってしまう。しかし、 「・・・祐介」 「っ?」  名前を呼ばれたかと思えば、ポンポンと頭を軽く叩かれ、そして両腕で抱きしめられる。  知っている胸よりもどこか小さくて、抱きしめ方も違う。匂いも違う。  そして何より、 「ゃっ!」  好きな人じゃない。  そう思った瞬間、桜間は加嶋のことを突き飛ばしていた。 「あっ、すみまっ」 「そんなに黒江の方がいい?」  突き飛ばされ、後ろへとよろけた加嶋は俯きながら言う。 「竜、せんぱ?」 「俺知ってるよ?お前らが付き合ってんの」  コンサートのあと、一緒に消えてたし。  どこか感情がこもっていない声音で淡々と言ってくる加嶋に、桜間は恐怖を覚え「あの、あのっ」と首を横に振りながら腕を伸ばす。しかしその腕を取ることもせずに顔を上げ、まっすぐに桜間を見て加嶋は、 「俺も祐介のこと、好きなんだけど」  そう言った。 「祐介、俺なら黒江よりお前のこと大切にするしっ、」 「竜先輩っ!俺たちのこと、言わないでください!」 「・・・祐介?」  桜間はフラリと身体を揺らしながら加嶋の腕を掴み、お願いです!と縋る。 「もし大学にバレたら、黒江先生、ここにいられなくなりますよね?そんなの、絶対だめです・・・絶対」 「祐介落ち着けって、俺は別にっ」 「お願いです竜先輩、俺なんでもしますから!黒江先生が大学からいなくなるようなことだけはっ、俺なんかと付き合っていることは言わないでっ」 「大丈夫だから落ち着け!」
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