音色に恋して2

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 大学にバラされると思った桜間はパニックになっており、加嶋は焦る。どうにか桜間を落ち着かせようと、大丈夫だと声を掛けようとすると。 ―――ブー、ブー、ブー。  スマートフォンのバイブの音がレッスン室に響いた。  それに反応したのは桜間で。カバンの方に目をやると、加嶋がゆっくりと桜間の腕を下ろさせ、カバンへと近づく。そして何も聞かないでカバンの中からスマートフォンを引っ張り出して表示を見ると、そこには『黒江拓海』と書かれていた。 「竜せんぱ、」 「もしもーし」  そのまま加嶋はスイッチを押し、黒江からの電話を出てしまう。  瞬間、何か怒鳴り声が聞こえたが、加嶋は冷静で。 「祐介泣かせて何してるんだよ」  このまま俺のものにしちゃうから。 「じゃっ」  そう言い、電話を切る。  それを無言で見つめていれば、どこか悲しそうな笑顔を見せ「別に言わないぜ、祐介」と静かに言った。 「ただ、俺のことも視野に入れて欲しかっただけで」 「・・・ごめんなさい」 「即答かよ」  ふは、まぁそうだよな。 「知ってた」 「加嶋ぁぁあ!!」  バンっと扉が開く。  そこには珍しく息を乱した黒江の姿が。 「どこにいるとは言ってないのに、随分早いっすねぇ」 「てめぇっ・・・」  スマートフォンを戻しながら加嶋は呆れたように言うが、黒江は血が上ったままのようで、加嶋の胸倉に掴み掛かる。それに桜間は慌てて黒江の腕を掴んだ。 「先生!竜先輩は何もしてないから!」 「そうですよ、俺はアンタみたいに泣かせてないから」 「っ!」  どこまでも冷静に―――いや、どこか寂しそうに―――言う加嶋。 「ほら、怖い顔してないで早く祐介を攫えば?」 「言われなくてもそうする」  黒江はゆっくりと掴み掛かった腕の力を抜き、そして腕を掴んでいた桜間の手を掴み直す。 「あの、先生・・・」 「行くぞ」 「でも、」 「祐介」  躊躇ってしまう桜間に加嶋はニッコリ笑い「行きな」と背中を押した。  それに桜間は「ごめんなさい」と呟き、黒江に腕を引かれるままレッスン室から出て行った。 『お願いです竜先輩、俺なんでもしますから!』 「―――好きな奴を脅すことなんて出来るかよ」  出て行った二人を見送り、加嶋はポツリと零す。 「あーあ」  俺って、ほんとバカ。  そんな言葉と一緒にポトリと一粒。  床にシミを作ったのだった。 ~ * ~ 「ちょっと、わっ、黒江先生!」
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