40人が本棚に入れています
本棚に追加
「まずは洗浄だ洗浄!」
殺菌するのはその後だ。
「なに意味不明なこと言ってるんですか!なんで服を着たままシャワーとかっ!」
車に乗せられたかと思えば無言のままマンションへと連行され、そのままお風呂場へと連れて行かれた桜間。
桜間はこの家のお風呂を使うのは初めてではない。ではないが、服を着たままお風呂に入ったのは初めてである。
「何かされてるかもしれねぇからな」
扉の前に立ち、逃げられないようにしながらシャワーでお湯を掛けてくる黒江に桜間は「何もされてませんって!」と顔を腕で拭う。
「そうやって庇う可能性もある」
「・・・ただ、抱きしめられただけです」
「あぁ?!」
「でもっ!」
桜間は濡れた身体も、相手が濡れることも気にせずに黒江の首に抱きつき、初めて自分から、そっと口付ける。
「でも・・・好きな人じゃないって思って」
突き飛ばしちゃったんです。
桜間は恥ずかしさから首元に顔を埋める。これはもうクセになってしまった。
「それで、先輩、俺たちの関係知ってて、で、どうしようって思って、」
でもでも、その前に、
「ごめんなさい」
桜間は少し離れ、しっかり目を見て謝った。
「俺、あのあと謝ろうと思って、その、」
「別にいい」
謝る桜間に対し、黒江はフッと笑い「俺も悪かった」と言った。
「お前が加嶋に懐いてるから嫉妬しただけだし、それに」
お前が取られるんじゃないかって、心配しただけだ。
目を逸らしながらそう言う彼に桜間は「バカですね」と笑った。
「ずっと憧れて、そして追い駆けて来たっていうのに、今更別の人を好きになるわけないじゃないですか」
「でもなぁ、お前・・・」
「俺はずっと先生が好きですよ」
先生だけ。
「先生が大好きです」
「・・・ばか」
黒江はシャワーを床に手放し、桜間を抱きしめる。そして軽く口付け、
「俺はいつだってお前のことしか考えてねぇから」
周りなんか見てる暇がねぇくらい、
「お前も俺でいっぱいにしてやるよ」
「・・・はい」
「ん、ぁ、待って、せん、せぇ、」
「待たない」
「やっ、そこっ、だめっ、やぁあ!」
お互いの顔を見ながら身体を重ねる黒江と桜間。
今度は後ろを向けとは言われず「俺の顔が見たいんだろ?」と、意地悪な顔をしながら聞いてきたため、「知らないっ」と首を背けて答えたが、もうそんな余裕などどこにもない。
「ここが、気持ちいい、くせに」
最初のコメントを投稿しよう!