プロローグ

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 ラザフォード王国――『アレスティア』  この街の郊外にひっそりと建つ孤児院があった。  そこでは男女合わせて十数人の子供達が、20代くらいの1人のシスターと共に貧しくも楽しい生活を送っていた。  修道院ではなく孤児院なのにシスターなのは、この女性ももともとは孤児として修道院に拾われた歴史を持つ。そこでシスターとして育ち、自身も多くの孤児を救いたいという想いから、宗教など関係なく迎えるために修道院ではなく孤児院を選んだのだ。  貧しい生活のせいもあり、流行り病などにかかってしまっては薬を買うことが出来ずに悲しい結末を迎える子供も過去に何度もいたが、それでも子供達はすくすくと育ってくれていた。  シスターも魔法の才があり、病気など体内に原因があるものは治せないが、怪我などの外傷なら治癒魔法で治すことができた。 「シスター! 痛いててて……っ。あははっ、また怪我しちゃった……!」  扉を開き鼻水を垂らしながら現れた1人の男の子が、リビング代わりの広間で椅子に腰掛け縫い物をしていたシスターのもとに駆け寄ってきた。 「また危ないことしてたのね、アルヴィス。ほら、治してあげるからこっちにおいで」  アルヴィスと呼ばれた5歳くらいの男の子は、えへへと笑いながら、縫い物を机に置いたシスターの膝上に乗った。  治してもらうときはこうしてシスターの膝上に乗って魔法をかけてもらうのが、いつものことのようだ。
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