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「ねぇ、アルヴィス。お願いだから、もう危ない大人達に近付いちゃダメよ?」
肘や膝、額にまで擦りむいた傷があるアルヴィスに魔法をかけてあげながら、優しく話し掛けるシスター。
「でもシスター、あいつら、せっかくみんなのために取ってきた林檎を奪うんだ!」
アルヴィスは、街の近くの森に実っている果物を採取することが日課となっていた。
子供ながらに、少しでもシスターの役に立ちたいがための行動なのだ。
シスターもそれを解っているから強く言うことが出来ず、毎日こうして怪我を治してあげていた。
「しょうがないのよ。私たちより、任務やお仕事で採っている大人達に優先権があるもの。私たちは残り物を採れるだけでも感謝しなくちゃ」
「任務ぅ? よくわかんないよ! とにかくボクは大人達が大っ嫌いだ!」
「私も大人よ?」
「シスターのことは好きぃー!」
「あははっ、くすぐったいよアルヴィス」
怪我を治してもらうと、シスターに抱きつくアルヴィス。
怪我の絶えない生活だが、アルヴィスは幸せに暮らしていた。
――アルヴィス、10歳。
「シスター、今日は大量だァ」
背中に担ぐ竹製の籠に、溢れるほどの果物の山。
アルヴィスは籠を玄関横におろすと、さらに片手に持っていた1羽の野うさぎを自慢顔でシスターに見せつけた。
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