~お庭番 早川寿明の受難~

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自分でいうのもなんだけど、運動神経は他の奴よりちょっといいくらいだったと思う。 名前は早川寿明(はやかわとしあき)、年は20歳。大学の工学部に通っている二回生だ。 それが、あることがきっかけで黒脛巾組のお庭番として働くようになった。 なったというのは、父に言われて仕方なく、選抜試験を受け合格してしまったから。 俺の家はもともと仙台を守る黒脛巾組の一族。父も母も普通の一般市民で霊法師の力はない。だが、草の根的な古臭い因習のひとつで、黒脛巾組に貢献するのが務めという頭の持ち主だ。 まさか自分に霊法師の素質があったなんて、高卒まで全く知らず(知らされず)、大学進学が決まった時点で、黒脛巾の奨学金を受ける資格があるという話を聞いて、ダメ元で受けてみただけだ。まさかお庭番の選抜まで受かるとは思わなかった。 その後、夏休みを利用してお庭番と霊法師の修行をさせられた。ほぼ体育会系の合宿だ。確かに修行はきつかったが、どうやら俺には向いていたようだ。もともとアルバイトを何個も掛け持ちしていて、体力勝負を得意としていた部分はあったと思う。もちろん大学は真面目に通い、単位を落としたこともない。遊びの部分をアルバイトにあてたようなところもある。かといって友人が少ないわけでもなく、ごく一般のその辺にたくさんいる学生の一人だと自分では思っているが……。体力的に秀でたところは他の奴には見せてはいない。適当にごまかしながら、目立たないようにするのも隠密行動の一つだと叩き込まれたから。
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