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「それじゃあ、改めて……レイン・アークだ、よろしく頼むよ」
私の目の前に座る魔王……レインさんが手を差し伸べてくる。
言ってしまえば握手の要求なのだが、まだ彼を信頼できない私としては、その手を取るのにどうしても躊躇してしまうものだ。
「……リーサ。リーサ・レイヴです」
だが、これも最低限の礼儀というもの。名乗りを返し、握手を交わす。
ここは応接室のようなところらしい。ソファーとテーブル、飲み物を入れるための器具。客を迎え入れるための設備が一通り整っている。
私の前には紅茶が一杯。レインさんが用意してくれたものだ。まだ淹れたばかりなので、飲むには少し熱すぎる。
その少し奥には籠にまとめて置かれたお茶菓子。自由に食べてもいいらしい。
私とレインさんは向かい合うように座り、そして……
「えっと……」
レインさんの後ろにはナズさんが威圧感と共に佇んでいる。
「……ナズ・ルクスだ。よろしく頼む」
だが、一応挨拶はしてくれた。あくまでも話し合いの場という事だろうか。
「さて、早速だけどリーサ。君に色々と聞きたいことがあってだな……」
「待ってください」
「ん?」
「さっきの私の質問に答えてください……なぜこんなことをするんですか?」
私は今、この状況をほとんど理解できていない。魔王を倒しに来たと思ったら、その魔王とお茶をしているなんて、一体何が起こったのかと言いたい。
こうする目的を聞く権利くらい、私にはあるはずだ。
「……さっきも言ったように、僕に君と戦う意志はない。あくまで客人としてもてなそうとしているだけさ」
その割には、ナズさんは私に敵意を向けてきたけれど。
でもそのナズさんも『今すぐ引き返せば何もしない』と言っていたことだし、敵意はあっても戦意があったわけではないのかもしれない。あくまで私が戦う意志を見せたから迎え撃ったのか。
「あとはまあ、君に聞きたいことがあるというのもあるけどね」
「……わかりました」
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