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「他に聞きたいことは?」
「いえ、特には」
とりあえず、これまでのレインさんの行動の理由はわかった。
理由というか、この城に訪れた私を普通に迎え入れただけのようだけど。
「じゃあ、こっちから質問させてもらおう。ずばり、君がここに来た理由についてだ」
レインさんは手元の紅茶を一杯飲み、話を切り出す。
「……私が来ることは分かっていたのに、理由はわかっていないんですか?」
「今までカリア国含めた人間たちの国は、僕らに対して特にアプローチを仕掛けてこなかった。それがどうして突然君のような刺客を送り込んできたのか全くわからないんだ」
「……っ! ふざけないでくださいっ!」
思わず私は思い切り机を叩き、立ち上がっていた。突然の私の激昂に、レインさんは驚いている。
どうして私が来たのか全くわからない? 世界中の人々が怯えているというのに、全くふざけている。
その上で私を客人としてもてなすなんて、とてつもない侮辱だ。
「ど、どうしたんだ!? 落ち着いて!」
「貴方が……! 貴方があんな奴らをけしかけるから!」
「あんな奴ら?」
「とぼけないでくださいっ! 異端ですっ!」
「っ!?」
……この世界の人間たちは今、異端という異形の怪物の脅威に晒されている。
異端は不死身の化け物だ。いくら普通の攻撃を仕掛けて、倒れることなく襲い掛かってくる化け物。
その異端を操る元凶こそ……今この場にいる、魔王なのだ。
「……おい」
「もうわかったでしょう!? 私がここに来た理由がっ!」
「やめろっ!」
話し合いの場を設けるからには、なにかしら交渉の材料があるものかと心の片隅で思っていた。だが、いざ飛び出てきたのはどうしてきたのかなどというふざけた言葉。
戦わずに解決できると少しでも思った私が馬鹿だった。私は得物に手をかけ……
「……僕が、何だって?」
……止まった。
「え……?」
「僕が異端の元凶だと?」
レインさんの様子が明らかにおかしい。座って俯いたまま、静かにそう呟いている。先ほどまでの優し気で明るい雰囲気は、どこにもない。
「もう一度言ってみろ! 誰がっ! 誰があんな奴らの!」
レインさんが大声を出しながら立ち上がって、私の胸倉をつかんだ。
その顔に浮かんでいたのは明確な憎しみの表情。怒りで魔力を制御できていないのか、右目は赤く染まっている。
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