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「誰が奴らなんかをけしかけるものか! 存在する価値もない、あんな奴らを!」
「おい、レイン! 落ち着け!」
さっきの私以上の激昂。声を荒げ、異端に対して罵詈雑言を言い放つ。後ろから呼びかけるナズさんの声も耳に届いていないようだ。
対する私の心は戸惑いに包まれていた。突然レインさんが豹変したこともある。だが……
なにより、元凶だと思っていた魔王が異端のことをここまで否定することに、戸惑いを覚えたのだ。
「僕は……僕はあいつらなんかの!」
「レインッ!」
ナズさんのひときわ大きい声が部屋に響いた。レインさんの声が止まり、部屋が一気に静まり返る。
「……落ち着け、レイン。話し合うんだろ」
「……すまない」
どうやら、レインさんはどうにか冷静さを取り戻したらしい。再び椅子に座り込み、何度か深呼吸をする。
「驚かせてごめんよ。少し取り乱してしまった」
少し、どころではなかったと思うが。
「いえ、いいんです……私も言いすぎました」
私も座りなおし、心を落ち着かせる。
この様子を見る限り、どうやらこの話はあまり単純に済ませられる話ではないようだ。
「……話を整理しよう。つまり君は僕を異端の元凶だと思って、僕の首を取りに来たわけだ」
「そうなります……正確には、カリア国から正式に依頼をされた形になりますが」
「つまり、カリア国全体がそう思っていると」
「はい」
人間にとって、魔法を自由自在に操る魔族は異常な存在である。同じく異常な存在である異端を関連付けるのはそう不自然な事ではない。
「でも、実際にはそうではない、と?」
「……ああ。むしろ異端は僕らにとってもあまり良い存在じゃない」
……話が全く違う。この話が本当だとすれば、あの異端という存在は一体何なのだろう。
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