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「僕も魔王なんて大層な称号を冠しているけれど、実際は王なんてほどのものじゃない」
「そうなんですか?」
「確かに大昔、魔族が人間と争ったときに魔王はその指導者だった。だけど僕はその子孫ってだけなんだ。今となっては魔王なんてのはただの象徴で、何かを統治するような役目はない」
……確かに、レインさんは人が好さそうに見えるけれど君主であるような雰囲気ではない。
話している限り帝王学を修めているような様子もないし、こう言っては悪いがそこらの商店で働く愛想のよいのお兄さんが良いところだ。
魔王の騎士だというナズさんとの会話も主従関係というよりは友人関係のように思える。魔王というのはあくまで称号であり、実際の王ではないという事か。
「しかし……僕が異端の元凶、か。だとしたら刺客を送り込んだことにも説明はつくが……」
レインさんは腕を組んで考え込む様子を見せる。あれほどの反応をしたのだから、やはり思うところがあるのだろう。
「……よく一人でここまで来られたな。道中異端に襲われることもあっただろうに」
レインさんが思いに耽っている間に、今度はナズさんから質問が飛んできた。
疑問に思うのも最もだ。先に述べたように異端は不死身の怪物。通常の攻撃では決して倒すことはできない。
まだ数が多いわけではないとはいえ、その異端がうろつく世界を冒険してきたのだ。実際、何度か異端に襲われたことはある。
「そうですね……」
しかし、これを言ってしまっていいものか。相手は異端の元凶として教えられてきた人物だ。
……だが、流石に先ほどの激昂は演技とは思えない。信じてみても……いいのかも。
ただ、私の話を信じてもらえるかはまた別の話。この"理由"は、少々信じ難い話なのだ。
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