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「貴方が本当に異端の元凶でないと言うのなら、私はこの目で、貴方という人を見極めたい。私が貴方を心の底から信用できるまで、貴方に敵意が無いという確信を持てるまで、貴方という人を見てみたい」
"ない"ことを物理的に証明するのは不可能だ。
レインさんが異端の元凶で"ない"事を示す話は、確かに筋の通ったものである。しかし、可能性が低いことはわかっても、私は未だ迷っている。
初めて顔を合わせる人の話を、全て鵜呑みにするほど甘い考えをしているつもりはない。
ならば、私が納得するまで。レインさんが異端と関係ないと確信を持てるまで。
「だから、私をこの城に居候させてください」
私はレインさんを、傍で見極めてみたい。
「……」
レインさんもナズさんも、何も返答してこない。
私は仮にも魔王を倒しに来た人間。こうして面と向かって話をしているとはいえ、立場上は敵だ。
敵を自分たちの城に置くのは、やはりそう簡単に決断できるものではないだろう。
「……わかった。実は僕も同じ提案をしようと思っていたところだ」
だがしばらくの沈黙の後、その提案はあっさり受け入れられた。
「君は僕ら魔族と人間をつなぐ架け橋に成り得る存在だ。異端という共通の敵を持つ今、長らく途絶えていた二つの種族を再び一つに出来るかもしれない」
……共通の敵、か。
「同時に異端に対する切り札ともいえる力を持っている……拒む理由が無いよ。ナズも異論はないね?」
「……ああ、様子を見る限り寝首を掻かれるような事もなさそうだ」
ナズさんも抵抗することはなかった。一応、一定の信頼は得られたらしい。まだ言葉が厳しいけれど、それだけレインさんを守る意思が強いという事なのか。
「リーサ、君を歓迎しよう。僕を見極めたいと言うのなら、好きなだけこの城に留まるといい。僕もできるだけ、君に答える」
レインさんが手を差し出した。私は少し迷いつつも、決意を固めてその手を握り返す。
「……どうか、よろしくお願いします」
魔王と勇者。相容れない者が、同じ屋根の下で過ごすことになった瞬間だった。
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