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レインとナズ。二人の魔族が城の廊下を歩いていた。リーサが過ごすための部屋を確保しに向かう途中である。リーサ本人は、応接室で待機させている。
「……ナズ、彼女の話、どう思う?」
徐に、レインが話を切り出した。
「筋は通っている。だがどこかちぐはぐな様子が見えるな」
「……やっぱりか」
レインはリーサを前にしていた時とは全く違う、硬い表情を浮かべていた。
「彼女が異端を倒せる力を持っているとしても、一人で送り出すのはおかしい。それもよりによって女の子だ」
確かにリーサは確かな実力を持っている。
だがカリア国からこの城への道のりは決して短いものではない。長い道中、リーサ一人では厳しいと、送り出した人物はそう考えなかったのだろうか。
異端を倒せることと、異端に対処できることは違う。
異端には数で攻めてくる者もいる。一人で居るときにそんな異端に出くわしていたら、無事では済まないだろう。
それを、カリア国が考慮できないとも思えない。
「それに折角異端を倒せる力だ。それが不在の時に国が襲われたらひとたまりもないだろうな」
ナズが補足を加えた。
異端を倒せる人間が複数居るならいいのだが、様子を見る限り人間側でその力を持つのはリーサ一人だろう。
それを送り出すと言うのは、国の守りを捨てるという事。あまり賢い判断ではない。
しかも、よりにもよって、魔王が異端の元凶であるという未確定の情報を元に送り出しているのだ。
「あまり単純な話じゃないな。少し……面倒なことになるかもしれない」
「……ああ。警戒するべきかもしれん」
緊張の高まった二人の声が、廊下の中に溶けていった。
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