Chapter2 魔王と勇者

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*** レインとナズ。二人の魔族が城の廊下を歩いていた。リーサが過ごすための部屋を確保しに向かう途中である。リーサ本人は、応接室で待機させている。 「……ナズ、彼女の話、どう思う?」 徐に、レインが話を切り出した。 「筋は通っている。だがどこかちぐはぐな様子が見えるな」 「……やっぱりか」 レインはリーサを前にしていた時とは全く違う、硬い表情を浮かべていた。 「彼女が異端を倒せる力を持っているとしても、一人で送り出すのはおかしい。それもよりによって女の子だ」 確かにリーサは確かな実力を持っている。 だがカリア国からこの城への道のりは決して短いものではない。長い道中、リーサ一人では厳しいと、送り出した人物はそう考えなかったのだろうか。 異端を倒せることと、異端に対処できることは違う。 異端には数で攻めてくる者もいる。一人で居るときにそんな異端に出くわしていたら、無事では済まないだろう。 それを、カリア国が考慮できないとも思えない。 「それに折角異端を倒せる力だ。それが不在の時に国が襲われたらひとたまりもないだろうな」 ナズが補足を加えた。 異端を倒せる人間が複数居るならいいのだが、様子を見る限り人間側でその力を持つのはリーサ一人だろう。 それを送り出すと言うのは、国の守りを捨てるという事。あまり賢い判断ではない。 しかも、よりにもよって、魔王が異端の元凶であるという未確定の情報を元に(・・・・・・・・・)送り出しているのだ。 「あまり単純な話じゃないな。少し……面倒なことになるかもしれない」 「……ああ。警戒するべきかもしれん」 緊張の高まった二人の声が、廊下の中に溶けていった。
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