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「っ!?」
速い。数メートルはあろうかという距離を一瞬で詰めてきた。
でも反応できないほどじゃない。繰り出された突きをかわし、双剣を振るって反撃に出る。
「思ったよりもやるな。今のを避けるとは」
「舐めないでください……!」
双剣を使うメリットは圧倒的な手数。反撃に転じた私は攻撃の手を緩めず、相手に何もさせないよう立ち回る。
金髪の男は槍で私の攻撃を防ぐばかりだ。はじめこそ驚いたが、こうしてペースを握ってしまえばこっちのものである。
あとは相手が消耗するを待つだけ。
「喰らえ……!」
「きゃっ!」
突然、私の身体を痺れが襲った。
想定外の事態に思わず攻撃の手が止まってしまう。
「魔法を使う相手は初めてか? 少し油断しすぎだ」
ああ、そうだ。魔族にあるのは武器だけじゃない。魔法を使うことをすっかり失念していた。
「今度はこっちから行くぞ」
男の反撃が始まった。
槍のリーチを生かしての連続突き。こちらの攻撃がギリギリ届かない位置をうまく保って攻めてくる。
相手は槍一本だが、その分だけ身軽だ。中々近づくことができない。ならば。
「これでっ!」
私は黄緑色の水晶のような石を取り出し、それを思い切り砕いた。直後、あたりに強い風が吹き荒れる。
「魔石か……?」
魔石。魔法の力を閉じ込めたもの。
本来であれば魔法は魔族だけの力だが、これを使えば私のような人間でも魔法の力を借りることができる。
相手が魔石から発生した風で怯み、隙をさらした瞬間に懐に潜り込んだ。またこちらのペースへ持っていきたいところだが……
「くっ……!」
攻撃を仕掛ける前に相手に距離をとられてしまった。
どちらの攻撃も届かない。相手には魔法があるが、その動作くらいなら見分けられるだろう。
……小休止、といったところか。
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