Chapter1 魔王の城

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目を疑う出来事が起きた。 私に向かって向けられた男の槍が、急激に伸びてきたのだ。 「っ!?」 「こいつは伸縮自在の槍でね。これくらいの距離ならお安い御用だ」 予想できなかった攻撃に、一瞬動きが固まってしまう。 「隙あり、だ」 怯んだ隙をついて距離を詰められた。男は槍を元の長さに戻し、再び攻めてくる。 再び、こちらの攻撃がギリギリ届かない、近づきすぎないほどの距離。槍使いに有利な距離だ。 「くっ……」 「騙し打ちみたいな真似になって悪いが、こっちも必死なんでね」 そう言う男の声色は、言葉とは裏腹にまだまだ余裕を持っている。 しかし、私を本気で倒そうとしているのは確かだ。魔王を討ちに来た私に、強い敵対心を持っている。魔王とは、そこまで守る価値のある者なのだろうか。 だからといって、みすみすやられるつもりはない。 「はあっ!!」 「なっ!」 連撃の中に、一瞬だけ存在する隙。私はその隙を見逃さなかった。 右手の剣で槍を弾き、左手の剣を構えながら相手の懐に潜り込む。こうなればこっちのものだ。 槍は中距離に対応できる厄介な武器だが、逆に至近距離には弱い。小回りが利かないためである。 ここまで距離を詰めてやれば防御することも難しいはずだ。相手が距離を調節する前に、ここから手数を使って畳みかける。 「甘いな」 ……だが、私の読みは外れていた。 「伸縮自在って言っただろう?」 男の手には、ナイフほどまで縮んだ槍が握られていたのだ。
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