Chapter1 魔王の城

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「そんなっ……!」 私の双剣での攻撃は、見事に塞がれてしまう。男は蹴りを繰り出し、私の双剣を弾き飛ばす。 次いで男は得物を失った私の脚を斬りつけ、動きを封じてきた。 ナイフと言えば、双剣よりも至近距離での戦闘が有利になる武器だ。距離を詰めたことが逆に仇となったということか。 「これで終わり……だな」 「……っ!」 私の喉元に槍が突きつけられる。 武器は手元にない。脚を怪我しているせいでまともに動くこともできない。魔石を使おうにも、この状況で怪しい動きをすれば即座に首を斬られるだろう。 なすすべ無し、か。 「何か言いたいことはあるか?」 私は男の質問には答えず、そっと目を閉じた。 死にたくはない。言いたいことだって、沢山ある。故郷のお父さんや友達に伝えたい言葉が。 だが、抵抗しようとも思わない。これ以上の抵抗は無駄だと分かっているからである。 私の心を支配しているのは、諦めだった。絶望的なこの状況で、私は完全に諦めてしまったのだ。 「……そうか」 "何も言わない"という返答をした私に、男が言葉を漏らした。 ああ、そういえば結局、彼の名前を聞いていない。今この場で質問すれば、ファーストネームくらいは教えてくれるだろうか。 そんなどうでもいいことを考えて、死への恐怖を紛らわす。 槍の先端は手振れにより私の首元に触れたり離れたりしている。これがもう少しで私の首に突き刺さるのだ。 ……恐い、嫌だ。けれど、覚悟は出来ている。目を瞑った暗闇の中で、私はただただその時を待った。 「リーサ、と言ったか。さよならだ」 男が言った。ついに、最期の時だ。私は全身に強く力を入れて、痛みと苦しみに備える。 「そこまでだ、ナズ!」 ……だが、その槍が私に突き刺されることはなかった。
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