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恐る恐る目を開いてみると、深い青色の髪の男性が金髪の男性を制している。
「……レイン」
「何も殺すことはないだろう?」
青髪の男……レインと呼ばれた男は金髪の男が持った槍をゆっくりと下ろした。金髪の男も抵抗はしない。
槍はそのまま黒い炎に包まれて消えてしまった。金髪の男の右目も、赤色から元の色に戻っている。
「別に殺そうとしたわけじゃない。気絶させて帰すだけだ」
「ならいいんだけど……さて」
レインがこちらを向いた。
第一印象は、ただの好青年。優しい顔つきをしている。
瞳の色は髪と同じ深い青。中々に綺麗な色で、ずっと見ていると吸い込まれそうになる。
「ナズが怖い思いをさせてしまったみたいで……すまなかったね」
レインから私に向けられた最初の言葉は、謝罪だった。軽く頭を下げ、誠実な言葉で謝ってくる。
「レイン、そいつは……」
「わかってるよ、勇者だろう?」
やはり私がこの城に向かっているという情報は伝わっていたようだ。
だがレインは私が勇者であることを知っていながら余裕のある態度をとっている。敵である私を前にしながら、だ。
「……あなたは?」
私は警戒しながら素性を訪ねた。
敵に対してこんな態度をとってくるのだから、よほど自信があるのだろう。
「僕か? 僕は魔王だよ」
「……え?」
魔王。
余りにもあっさりと飛び出たその単語に、私の思考は一瞬固まる。
「どうかした?」
魔王が、とぼけた顔で聞いてくる。ナズという男は、その後ろで頭を抱えてうな垂れていた。
「っ!」
「うおっ!?」
だが私はそんな平和な雰囲気には浸れない。我に帰ると同時に双剣を拾い上げ、魔王に斬りかかった。
魔王は咄嗟に黒い炎と共に大剣を出現させ、私の攻撃を防いだ。根元から先端まで全てが漆黒の大剣だ。
それを出現させるとともに、魔王の右目が赤く染まった。赤と青のオッドアイである。
「け、血気盛んだな……」
「ほらみろ、簡単に身分を明かすからだ」
魔王はたじろぎながら私を弾き飛ばした。私はそのまま後ろに跳躍し、二人の間に距離ができる。
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