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「よ、よし一回落ち着いてくれ」
魔王は大剣を黒い炎と共に消し去り、両手で私を制してくる。
右目は剣を手放すと同時に元の青色に戻った。どうやら魔族は武器召喚を含めた魔法を使うと目が赤くなるらしい。
「……どうして武器を手放すんですか?」
「僕の剣は人を斬るためのものじゃない」
「……?」
「そもそも最初から君に敵意は向けてないだろ?」
魔王は私に必死に説得の言葉をかける。
……確かにそうだ。ナズの攻撃を止めていたし、向こうから何か仕掛けてくる兆候もなかった。
そもそも自ら魔王だと明かすメリットもないのだ。
「貴方は私と戦う気はない……という事ですか?」
「そう、その通りだ」
……嘘をついているような様子はない。とりあえず、本当に戦う気はないようだ。
私はゆっくりと武器を下ろした。ただし、警戒は完全には解かない。
「お人好しめ」
「まあまあ……とりあえず信じてくれたみたいじゃないか」
信じたわけではないのだけれど……
「さて、立ち話も何だし、場所を移動しようか」
「……なぜこんなことを?」
魔王の今までの行動は謎だらけだ。
私が来るという話は伝わっているようなのに城の警備が強化されているような様子がなかったり、敵である私をなぜか救ってくれたり……
聞きたいことが山ほどある。
「まあまあ、細かい話は落ち着いてからにしよう。あー……」
「……珈琲か紅茶、どっちが好きかな?」
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