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奇妙で幸せな生活
実は、その葬儀以来、僕には有紀が見え、有紀の声が聞こえるようになった。
幽霊でもいいから戻って来て欲しい、心底そう思っていたので、きっと神様が願いを叶えてくれたのだ。
有紀は死んだ瞬間から、僕をずっと見ていた。病院で飛び降りようとした時は、必死(もう死んでるのだけれど)で止めようとしたけど、すり抜けて触れられないので本当に焦った、と言った。二度と死ぬような真似はするなと厳しく説教された。
有紀も自分と僕とを切り裂いた相手が憎くて、どんなヤツかしばらくついて回って調べたらしい。結果、心から後悔している事を知り、許すことにしたと言った。
何度も僕に呼びかけたらしい、幻聴だと思っていたのは幻聴では無く、徐々に聞こえるようになっていたのだろう。僕が林さんに飛びかかろうとパイプ椅子を持って走り出したときも、何とか止めようと、何度も何度も叫んだと言った。
おそらくその思いが僕に姿を見せ、僕に声を聞こえる様にしてくれたのだろう。僕以外の人に有紀は見えなかったし声も聞こえなかった。
それから霊の有紀と二人の奇妙で幸せな生活が始まった。
朝晩、彼女と並んで、彼女の遺骨と白木位牌、写真に手を合わせた。死んだ本人が自分の位牌に手を合わせるのもおかしな話なのだが・・・。
霊の世界というのも色々と教えてもらった。位牌に魂が入るのかと思っていたら、そうではなく、生きている人がここに亡くなった人の魂があると思った所に宿る、そして、多くの場合、それが位牌なのだと言っていた。
僕の場合はいつも写真を見て思いだしているので、写真に宿っている事が多いと言っていた。
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