奇妙で幸せな生活

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前々から思っていた疑問も聞いてみた。朝晩のお供え物があんな小さな器で足りるのか尋ねたところ、お腹は空かないので、量は必要ないと言っていた。ただ、供えてもらうと味は感じることができるらしい。 それからは僕は必ず朝晩自炊してお供えした。自炊で作るものは、すべて霊の有紀が横に付き教えてくれたので、ずいぶんと料理の腕は上がった。 僕は、霊は人の頭の中を見通せると思っていたのだが、そんなことは無く、単に肉体と心が分離しただけで、言葉を発しなければ通じないらしい。 なので、有紀に僕の意思を伝えるには話をするしか無いのだが、どうしても第三者には僕がブツブツと独り言を言っているように見えるらしい。(まあ、そうだろうな) 二人というか、霊の有紀との生活は楽しかった。 完全に失ったと思っていたから、話ができるだけで、とても嬉しかった。 もちろん本音を言えば、セックスができないのは辛かったけど、でも、話が出来るのと出来ないのでは雲泥の差だ。 会社ではみんながとても心配してくれていた。僕が結構明るいので、無理をした「カラ元気」だろう、と余計に気を使わせてしまった。 ある日の夕食は、手を抜いてチャーハンを作った。TVで中華ドレッシングを使った簡単レシピを紹介していたので試した。 「どう?」 レンゲですくって写真の前に供えた。 「あら、美味しい」 僕も食べてみた。 「ほんとだ。美味しい。じゃあ、今日はこれでいいね」 卵で中華スープを作り、野菜サラダを添えて夕食の準備が出来た。 供える為に、ニトリで小さめの食器を色々揃えた。それらに盛って、きれいに並べた。僕はその手前に、普通に盛って並べた。 「いただきま~す」2人で手を合わせてから食べ始めた。 「なんだか、量が違うので悪いね」 「量は関係ないから。いつもありがとうね。ホントは私が作らなきゃならないのに」 「全然、問題無いよ。もっと腕磨くさ。もっと、美味しいモノを食べさせる」 「ありがとうね」
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