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宝飾類は、おそらく時間が経てば素人では換金が難しくなる。泥棒は素人だが、頭の悪いやつじゃなさそうだ。
健康保険証と死亡診断書のコピーがあれば、身分証明になり、かつ、怪しまれずに換金する理由が付く。
それを考えて持って行ったのだろう。そうであれば、近くの質屋に行くはずだ。
スマホで質屋を検索して電話をしたら、3件目でまさにドンピシャだった。丁度、犯人が来ているところだった。
そこの主人にお願いして、少し引き留めて貰い、部屋にいた警察官に伝えた。その警察官から近くの交番に連絡し、おかげで犯人を逮捕出来た。
「凄い! 俊ちゃん、偉い!」有紀にはとても褒めてもらった。
泥棒に入られた家の住人も集まっていたので、逮捕の連絡で、大いに沸いた。
警察官からは素晴らしい推理だと言われ、住人からはコナンばりだと感心された。
「ところで、誰と話していたのですか?」警察官が聞いた。
スマホで誰かと電話しているのかと寝室を除くと、スマホも持たず一人で話をしていた、と言った。
「いや~、推理するときは独り言を言う癖がありまして・・・」
有紀と顔を見合わせながら、笑った。
その日の夜は戻ってきた指輪をクロスで磨き、写真の前に置いた。
有紀は指輪に顔を近づけて、僕が寝入るまで「綺麗!」と言って見入っていた。
「ねえ、これをプレゼントしてくれた時、覚えてる?」
僕がベッドに入って寝ようとしたとき、有紀が言った。
「覚えているさ。僕は有紀の事が本当に好きで、就職を待てず、なんとか婚約しようと、4年生の時に授業にも出ず、2ヶ月バイトして30万円貯めたんだ。婚約したら僕のものに出来ると思い込んでたからね」
「そうそう、2ヶ月、全然会ってくれなの。嫌いになったのかと悲しかった」
「そんな思いをさせてるなんて、全く気づいて無かった」
「鈍感なのよねぇ、昔から。一途だけどね」
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