8人が本棚に入れています
本棚に追加
「アホか」
背後から声がした。
「口開けな」
あたしは言われるがままに口を開けた。
ポイっと放り込まれたものは、甘くてシャリシャリした。
「これが金平糖」
「満天堂のやつ?」
「当たり前だろ」
そう、当たり前だった。だって満天堂の金平糖は、あたしと蓮ちゃんが出会った時の味だから。
「迎えに来てくれたの?」
「おしるこ買いに出ただけ」
蓮ちゃんは見え見えの嘘を平気でついた。
それは心地いい嘘だった。
眠たくなるような、そんな心地いい嘘はもう、ずっと一生あたしの耳元でだけ囁いてくれたらいいと思うんだ。
end
最初のコメントを投稿しよう!