金平糖

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あたしがアパートを飛び出したのは、夕方6時くらいだった。 蓮ちゃんと喧嘩して、それで。 冬も本番の真っ暗な外だったのに、蓮ちゃんはあたしに何も言わなかった。 ジャンパーとかコート持ってけとか。 なんかあるでしょ……無いか、喧嘩してんだから。 売り言葉に買い言葉で 「あたしだって、アンタみたいな男っっ……」 って言ったけれど、その続きが思いつかなくて飛び出した。 カッコわるい カッコわるい カッコわるい で、火照ったほっぺたに小さい粒が落ちてきて、それで初めて雪だかみぞれだかが降ってるんだって気づいた。 「冷たっっ!!雪降ってきたじゃんーーもぉっ」 一瞬で冷たくなったほっぺたに手をやって、液体になったそれを拭った。 天に向かって口開けて文句を言ったもんだから、雪はあたしの口の中に落ちてきた。 「無味の金平糖……」
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