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とりあえず僕とアレックスは近くの公園に場所を移し、カメラとインタビューを受ける覚悟の準備を整えた。
ベンチに座った僕たち二人に、目の前にはビデオカメラ。
「はい!じゃあシチジョー。あなたが生み出した・・・じゃないや、生み出す予定の作品と名誉について聞きます!」
「いや、ちょっと待て」
出だしが不親切すぎる。
「そもそも・・・僕は一体何をして偉くなるんだ?作品って・・・もしかして絵とか?」
「そうだよ!何言ってるのさ!ナオキ・シチジョーは”21世紀のアンディ・ウォーホル”って言われてるんだよ?」
「ア、アンディ・ウォーホル!?・・・確かに絵はやるけど、自分で言うのもなんだが・・・言うほど上手くないぞ」
本当に自分では言いたくなかったが、本当のことだ。
確かに高校は美術科に通っているし、小さな頃から絵は好きだった。
しかし、『だった』になってしまった。
息巻いて、夢を抱いて入った美術科には、化け物じみた奴らがウヨウヨいた。
それこそ、才能の塊。
『絵の才能』じゃない。『努力の才能』だ。
入学して初めて仲良くなった友達が、絵に没頭しすぎて食事を忘れぶっ倒れる姿を見た時、僕は生まれて一番の衝撃を受けた。
それは幼稚園の頃に見たラッセンの絵より、小学生の頃に見たミレーの「落穂拾い」より、衝撃的だった。
そして、『僕には出来ない』と思ってしまった。
僕は今高校3年生。
画家になる夢は諦めた。
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