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「・・えーと、アレックス?多分来る場所を間違えてるよ。僕は偉人にはならないし、画家にもならないんだ」
「そんなはずないよ!ボクはシチジョーの絵が大好きなんだ!小さな頃から大好きだった」
困惑したような瞳を向けられ、僕は顔を背けるしかなかった。
もちろん、アレックスが未来から来ただなんて信じ切れてるわけでもない。
それでも、僕の絵が好きだと言って見つめてくる視線に耐えられるはずもなかった。
アレックスの正体や真意は分からずとも、僕の絵は見たことがあるのかもしれない。
それだけは信じられるほどに、アレックスの目は澄んでいた。
「・・・ボクが勉強した内容では、今年のこの季節にシチジョーは海外に留学するんだ。それで沢山の”バゴい”絵を描いたんだって」
「・・・バゴい?」
「あ・・・ごめん。この時代で言う”スゴイ”とか”ヤバイ”って意味」
「・・・まじか」
未来の若者言葉・・バゴいな。
なんなんだろう?ものすごく設定がしっかりしている。
こんな幼い子供に、こんなしょうもないSFの設定資料集みたいな話が作れるだろうか・・・?
もしかして・・・本当に・・・。
「ボク・・・こっちに来る前にシチジョーに会ったんだ」
「え・・僕に・・?」
「あ、50年後のね。過去で会う偉人には先に直接会って許可を貰うんだ。まだそんなに過去へインタビューに行ける子供は多くなくて、ボクはすごく運が良かったなって思ってたんだけど・・・」
アレックスは、とても悲しそうに俯いてしまった。
そんなに憧れていたんだろうか。
存命中に学校の授業で扱われるような偉大な画家。
”21世紀のアンディ・ウォーホル”
僕が?全くピンと来ない。
それとも、アレックスくらいの歳の頃に聞かされていたら、僕は違う印象を受けたのだろうか。
「当たり前じゃん!」
目を輝かせて、そう言えたのだろうか。
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