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「・・・なんだよ・・がっかりだよ・・・。未来のシチジョーが言った通りになっちゃった」
「未来の僕が?なんて言ったの?」
アレックスは少し言い澱み、小さな声で呟いた。
「”あの頃の私に会っても無駄だ。あれは今の私とは別人、きっと私のような高みには辿り着けないだろう”って・・・」
「・・・なんだよそれ」
正直カチンと来た。
なんて不遜な物言いだろう。
少し上手いことやれて、偉人だなんだと持ち上げられて、今のこの時代の僕にそんな言い方をするような、そんな人間に僕はなるのか?
いや、なれはしないんだろう。
未来の”21世紀のアンディ・ウォーホル”さんとやらは、そう決めてかかっているらしい。
・・・僕だって、そもそもそんな人間にはなりたくない。
「アレックス、ちょっと伝言頼まれてくれるかな」
「え?」
そう前置きして、僕は目の前のカメラに向き直る。
「・・・あー、未来のナオキ・シチジョーさん?聞こえてますか?糞食らえ」
僕は思いっきりカメラに向かって中指を立てる。
「あんたがどんだけ偉くて、どんだけ絵が上手いかは知りませんけどね。糞食らえってなもんですよ。”あの頃の私に会っても無駄だ”?”きっと私のような高みには辿り着けないだろう”?そんなことを、あんたの絵が好きだって言ってるアレックスに吐いたんだとしたら、そりゃあそんな”高み”には行けそうにありませんよ。そんな踏ん反り返って、高校3年の僕を直視できないような奴に僕はなりたくないですからね。僕は僕の情けなさもヘタレさも、全部持って行きますよ。”21世紀のアンディ・ウォーホル”?阿呆らしい。昔いた人になぞらえられて悦に入って、そもそも僕は空き缶のイラストだとか、有名女優の顔の羅列を『カッケー、最高!』なんて思っちゃないんですよ!僕は僕の絵を描いて、あんたを超えてみせますよ!ナオキ・シチジョーさん」
一気にまくし立てて、僕は立ち上がりビデオのスイッチを切った。
「アレックス。これを未来に持ってってくれる?僕はこのまま大人になって、未来でそれを受け取るよ」
あっけにとられた様子のアレックスは、ビデオを渡されたままの体勢で、やがてニカっと笑ってくれた。
「ナオキ、なんかスッゲェ!」
「・・・へ?」
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