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その日の夕方、アレックスに突如走り去られた僕は、混乱した頭で自宅に帰りついた。
居間に入ると、ダイニングテーブルに懐かしい顔が見えた。
「おー直輝!元気だった?」
6歳年上の姉、一花(いちか)姉だった。
「うぉ!帰ってたんだ!?いきなりだね」
一花姉は高校卒業後、ダンス留学とやらで渡米し、久々の再会であった。
「どうなの?アメリカは」
「楽しいよ。大変は大変だけどね!まぁやりたいことをやってるわけだし、文句は無いかな」
実を言えば、僕の卑屈な諦めは姉への劣等感もあったりしたのだけれど、まぁ自慢の姉だ。
「直輝ぃー、あんたも来なよ。アメリカ!世話はするわよー?」
「わかった。行く」
「へ?」
ぽかんとしてしまった姉には、僕のいきなりの渡米宣言は意味不明だろう。
しかし、僕の中ではこの提案は驚くべきものではなかった。
先程未来人に聞いたばかりだ。
「・・・アレックスの言った通りだわ」
「・・・へ?」
アレックス?
なんで一花姉がアレックスのことを知っている?
「あぁ、アレックスってのは私の息子になる子ね。結婚すんのよ、私」
「は、ハァ!?」
「旦那の連れ子!可愛いのよー!前にあんたが送ってくれた絵の大ファンでさ。ナオキをアメリカに連れてくーって息巻いてたのよ」
「へ?・・・へぁ??」
「まだ10歳だけど、面白い子よー!旦那とユーチューバーになっちゃって、今も二階で新作動画を投稿するって2人で作業してるわ」
ユーチューバー?
新作動画?
投稿!?
まさか・・・。
頭の中で色々なピースが、ガチャリガチャリとはまっていき、おそらく考えうる最悪の完成図が出来上がっていく。
血相を変えて二階へ走る僕の背中に、自称未来人の母親の声が掛かる。
「ちょ、どうしたのよナオキ!?」
「僕が”バゴい”ことになる!!!!!!!」
バゴい偉人にインタビュー! END
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