出遭った

2/6
前へ
/60ページ
次へ
「うおおぉっ!!」 「なんのっ!!とりゃああっ!!」 都心から外れた中古マンションの一室。 築30年は経つ辛うじてコンクリート壁の部屋からは、今日も奇妙なテンションの声が響く。 「お疲れさまですー」 語尾を伸ばすのが癖の色素の薄い中年男で担当編集者、見上(ミカミ)が、そろーっとドアを開けて入ってくる。 呼び鈴は壊れている。 直すのも忘れて、いや、面倒臭がりな住人。 漫画家の茉裕(マツヒロシ)こと川澄茉裕(カワスミ マヒロ)、Takこと植田拓海(ウエダ タクミ)。 いわば合作でひとつの漫画を描いている。一般的には作画担当と原作担当に別れるけれど、キャラも案も共作の珍しいパターンだ。 25歳の二人組は田舎の幼馴染みだった。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加