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「だって、そんなのあり得ない!だって、ここに俺の体があるし、ものに触る感触も、視覚も、聴覚も、何もかも全部、前の世界のままだ!なんだってそんな事が・・・」
「ルイギアよ」
「え!?ルイギアってあの産まれて六ヶ月以内に付けないといけないって国で義務化されているあれがどうしたんだ?」
「あれって、一生付けていないといけないでしょ?」
「うん」
「それで、ルイギアは、微弱な電磁波を付けている人の体に当てて、私達の行動とか思考とか、感情とか何もかもデータ化されているっていうことは知っているわよね」
「ああ、知っているよ。そのデータを使って行動心理学や行動経済学、社会学とかの分野が飛躍的に進歩したんだよな。確か、国がそれらのデータを使って国内や国外の市場経済をコントロールしているとか」
ミリルは、途中の道で買ったクレープを食べながら、
「ええ、そうよ。六割方は合ってる。でも、ルイギアの使い方はそれだけでは無いのよ。いや、寧ろこっちの使い方の方が本命だったのかも知れない」
話すミリルの言葉に一気に重みが増した。
重りを付けて水の中にいるくらいに重く、息苦しさを感じる。
「さっきも言ったように、ルイギアは付けている人の体に微弱な電磁波を当ててその人のあらゆるデータを集めている。そして、そのデータを使えば、その人の将来考えること、取る行動、その人の成長過程を推測することが出来るわけ。それがどういうことか分かる?」
「どういうことって言われても・・・・・・」
暫く考えてみる。
いや、そんなの分かるわけがない。
「俺はそんなに頭が良いわけじゃ無いんだ。教えてくれよ」
「しょうがないなぁ、つまりね、私達が死んだ後もそれまで蓄積してきたデータを使えば、「自分」が復元することが出来るわけ。そして、それをVR世界で実現させたのがこの・・・」
「スピリッツ・パラレルワールドってことか」
ミリルは黙って頷く。
俺は既に死んでいる。
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