視線の正体

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大丈夫、誰もいない。 鏡にはややこわばった表情の自分が映るだけ。 彼は臆病な自分に苦笑した。 なんだ、鏡に映った自分の視線を感じたのか。 一人で怖がってバカみたいだ。 でも、なんだかやっぱり気味が悪くてそそくさとトイレを出たらしい。 うん、僕も彼の判断は正しいと思うよ。 長居しなくてよかったよね。 ……君も気づいただろう? 用を足す彼を見ていたのは鏡に映った彼じゃないよね。 だって、背を向けているとき鏡には彼の後頭部しか映っていないはずだから……
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