頭のおかしい事と有能さはまた別の話

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 任務などでは厳しいが、常にそれを強いることは好まない。メシの時間くらいどうでもいいだろう。だから、始業の鐘が鳴る前と終業の鐘が鳴った後は無礼講としている。  他の隊に言わせれば、俺は甘いんだろう。 「おはようございます、グラース隊長」  知った声に視線を向ける。  奴はなんとも優雅なものだ。ジェームベルト軍の制服は新緑色だ。形ももう少し儀礼的で優美。羽織る上着は深い緑に金糸の刺繍がされている、詰め襟に金ボタンのものだ。 「座りませんか?」 「…」  言いたい事は色々ある。コイツの顔を見た途端に吹き上がる不満というものが昨日から抑えられない。だが、部下もいる場で他国の責任者を引きずり下ろすような事は言わない。  溜息をつき座ると、なぜか横合いからパンやらスープやらが置かれた。 「おはようございます、グラース隊長!」 「あぁ、君か」  ハリスが朝から明るい笑みを浮かべて、あれこれ上官の為に食事を運んでいる。どんどん並ぶその量に、思わず目が丸くなる思いだ。 「…おい、これ本当に食べられるのか?」  基本的にうちの隊では残すのは厳禁だ。自分の体調を考慮して、食べられる分だけをよそって食べる。これがルールで徹底されている。  俺自身、残す事は好きじゃない。無駄だし、何よりも作った奴に失礼だ。  だが目の前のランセルは実に穏やかな様子で笑う。 「朝なので軽めですよ」 「……」     
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