頭のおかしい事と有能さはまた別の話

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 国境は奴らの行動範囲四キロから遙か外。怖いジェームベルト軍が不在となり、人数が減ったグラースの隊だけになる明日が勝負だ。  そしてこれは誰にも、例えハルバードにも話さない。ランセルもハリスに言わない。これは2人だけの話だ。 「それにしても、初めての共同作業ですね」 「……は?」  不意に手をサワサワと触られて鳥肌が立つ。うっとりと、かつ体をクネクネさせながら赤くなるランセルは、実に気持ちが悪い。思わず手を引き体も離した。 「あぁ、そんな殺生な」 「キモい! そして何が共同作業だ。歴とした共闘作戦だろうが」 「だって、2人だけの秘密なんですよ? 2人だけの秘密会議なんですよ? こんなの…ふふっ、興奮する」  暗い瞳でひたすら「ふふふふっ」というコイツを、キモいと思ってはいけないか? 確かに頭は切れるが間違いなくイカレている。背筋に走る悪寒が止まらない。 「おや、尻尾が膨れていますね。それは、どのような感情なのですか?」 「威嚇だボケ!!」  まったく、とんでもない者に好かれた。  これは俺の受難か? こんなの背負わされるほど俺は不幸な生まれなのか。  思わぬ受難。だが、仕事としては共にやれる。そんな不思議な関係が、コイツとの間にはある。重く溜息をつき、俺はひたすら「あと少しだ」と言い聞かせた。
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