【微エロ】焔の花紋に触れる唇

2/13
1223人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
 俺は静かに、悟られずに砦を出た。狐の身体能力は決して悪くない。その上に俺は一般的な狐族の中でも能力が上だ。  そのまま森の中を少し進む。音を殺し、辿り着いたのは旧砦。石造りの、人の気配のしないそこ。扉に手をかければ、やはり酷く簡単なもので壊すのも簡単だった。  扉を開け、中へと入る。所々に亀裂が入り、水が漏っている。  これでは確かに移動せざるを得ないだろう。  そうした砦の奥深くへと入っていくと、目的の物が見えてきた。 「やはり、生きていたのか」  古く、使用するには勇気がいるだろう。むき出しの配線と、錆びだらけの外装。酷く揺れているにも関わらず、音が外に漏れていない。  獣人族は音に敏感な奴が多い。そうした奴の目から隠すように、防音の魔法が何重にもかけられている。  ここで戦う事はできない。建物全てが崩れ落ちる可能性がある。  俺は一度外に出て、砦の周辺に結界を張った。誰も出入りが出来ないもの。外からも入れない、内からも出られない。俺を殺すしかここから出る事はできないだろう。しっかり上も囲ってやった。  砦の外で待っていること、数分。石造りの砦を急ぎ足で出てくる音に俺は立ち上がった。そして、唯一の扉を出た奴らは俺を見て固まっていた。 「ようやく捕らえる事ができたか」 「おま…」     
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!