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俺が結界から出れば結界は自ずと消える。
暗がりの道を、俺は正規の道から外れて森を彷徨うように歩いた。
時に足が震えて木に手をつき、よろめきながら前へと向かう。そうして喧噪と松明の明かりが見えなくなってようやく、膝を着いて崩れる事ができた。
「くっ……あぁ…」
熱い…。一度暴れ出した魔力が体を内から炙り、外に出ようともがく。神経に直接響くような熱は耐えがたい。
それでも誰に頼る事もしない。これは俺のプライドだ。部下に無様な姿を見せたくない、俺の意地だ。
「はぁ…」
意識が僅かにぶれる。膝を着いたまま、俺は上体が崩れそうになった。
こうなる事が分かっていたから、誰にも分からないよう森の深くへ入ってきたのだ。
倒れる。その体を不意に誰かが受け止めた。細い腕が俺の体を受け止めて、抱きとめてくる。肌に触れる他人の手に、俺の過敏になった体は過剰に反応してより熱を発した。
「辛そうですね、グラースさん」
「きさ…ま…」
何故、森の深くへと部下と共にいるはずの男がここにいる。まるで全てが分かっていたように、ランセルは俺を抱きとめにっこりと笑う。
「花紋ですね」
「!」
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