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ランセルの手が首元のタイを抜き取り、開ける。
肌に浮かぶ花を愛で、愛おしむようにふわりと微笑んでみせた。
「貴方が他の隊員と違ったのは、この力ですね。獣人と魔人族との間に稀に産まれる花紋の力。無尽蔵に体内で魔力を生成し、循環させる事で更に魔力を産んでいく。特異個体だからこそ、貴方は重宝された」
まるで愛を囁くような声だが、俺にとっては呪いだ。
睨み付けようと、ランセルはうっとりと俺の花に手を触れた。
「あぁ!」
神経に直接響く痺れは、熱を孕んでいる。痛みに近いはずなのに、体も脳みそもそうじゃないと俺に訴える。
この花に触れる刺激は俺の体には強すぎる快楽として響いてくる。
「この花は魔力の花なのですよね。一度魔力を解放してしまうと加速的に生成を始める。それを体内に収めても、加速は直ぐに止まらない。ゆっくりと収束するまでの間、貴方の体の中で膨れ上がる魔力を体外に放出する為に浮かび上がるのが、この花紋ですよね」
そうだ、呪いだ。この花が俺をダメにする。
この花が咲いた時には、俺は俺の意志を保てない。
勝手に反応していく体に引きずられる様に頭の中をかき乱される。俺は俺ではなくなっていく。
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