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首に咲く花から、腕の付け根から、同じように魔力を吸い上げていく。
その度に走るものは痛い。痛いのに気持ちがいいなんて、矛盾する。
悲鳴が、上げられないくらい疲れる。
涙の溜まる目で睨み付けると、そこには違う景色が広がっている。
ランセルの背に、コウモリを思わせる皮膜の翼が広がっていた。緑色の光をふわりと纏わせながら、そいつは月明かりだけの世界に柔らかな光を添えていた。
「あぁ、これですか? 貴方の魔力はとても良質で、かつ膨大なので逃がしているのですよ」
背を目線だけで指したランセルは、少しだけ辛そうな目をする。
息も絶え絶えで、脳みその半分は快楽に染まっている中で、俺はそれを「綺麗だ」と初めて思った。
「嫌ですよね。見苦しいとは思いますが、今の貴方を抱くのはちょっと……可哀想? あぁ、違いますね………難しいですが、したくないのです。だから私が熱を溜めるわけにはいきません。すみません」
本当に申し訳ないという、寂しく辛い笑みを浮かべたコイツは、やっぱりバカだ。
そうじゃない、俺は綺麗だと思ったんだ。この夜に浮かぶ儚い光が、それを纏う翼が、俺には神々しくすら見えたんだ。
「良かった…貴方の匂い、大好きですよ」
「え?」
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