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俺が見ていればよかった。もっと、見てやれていればよかった。あいつはいつも俺に挨拶をしていたんだ。そこで異変に気づいていれば、こうなる前に何か言えたかもしれない。してやれたかもしれない。
立ち上がる俺の手を、ランセルが止めた。そして、俺の目を真っ直ぐに見て首を横に振った。
「止めておきなさい。今貴方の顔を見ても、彼はただ虚しくなるばかりです。余計に、惨めになるばかりです」
その言葉に反論しようとしても、俺はその言葉が出てこなかった。
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