しがみついていた物がゴミ屑だと知った日

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 軍事総長は、俺の事を案じている。それは分かっているが、その気持ちも知っているが、それが俺には重荷なんだとは思っていないだろう。 「大体、グラース殿には砦の責任者など時期尚早だったのだ」  あぁ、本当に煩い。その口黙らせていいなら、簡単だろう。 「彼の出世は異例すぎますからな」  何の努力もしてないような声で言うなクソが。血反吐吐くような思いで過ごしてきたんだ。 「少々特殊な個体であるのは否めませんが、少し特別扱いが過ぎるのではありませんか?」  その特殊な体質がどれほどの地獄か、お前に味合わせてやろうか。  俺は、何をしているんだろうな。俺は何にしがみついているんだろう。こんなに虚しいばかりで、こんなに苛立ちばかりなのに、まだここから離れられないのか。  ――貴方の生きたい生き方って、どういうものですか?  うるせぇ、トカゲ野郎。お前の言葉が耳について離れないんだ。どれだけ考えても、俺の中で答えが出ない。俺の生き方ってなんだ。俺は…そんな事を考えて生きてきていない。 「そもそも、狐族がこの場にいるのが多少滑稽ではありませんか」  いい加減、耳障りだな。 「総長のご友人の息子だからと、少し甘い顔をしているのではありませんか?」  もう、いいか…。 「グラース殿、聞いて!」  ガタン!     
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