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上着も、軍帽も脱いできた。
街の中央にある噴水広場から見上げる空は抜けるように青い。気持ちのいいその景色を、俺は目を細めて見ている。
昔はよかった。モンスター退治や、盗賊討伐を仲間と一緒にして、笑っていた。この青い空を何の憂いもなく見て、単純に綺麗だと思っていた。先に広がる道に暗雲などなく、どこまでも行けるものだと思っていた。青臭い…ガキの頃の話だ。
後も先も、考えていなかった。口ばかりで何もしない奴らに嫌気がさした。キラキラした高見に見えたものは、とんだ屑籠だったんだろう。見てくれだけがかっこよかっただけだ。今となってはゴミにしか見えない。
「はぁ…」
だが、そのゴミにしがみついていたのも事実だ。
実際俺は今、清々してもいたが同時に先も見えなくなっている。軍人以外の生き方を知らないからだろう。
遊びもなくきてしまったから、世界の広さなど想像ができない。狭い世界でしか、生きてこなかった。
カツンと、軍靴の音がする。石の道を歩くその音は、知っている。だが、ここにいるはずのない人物だ。音のする方を見た俺は、そこに立つ男を見て固まった。
「こんにちは、グラースさん」
「お前…」
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