しがみついていた物がゴミ屑だと知った日

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 入ったのは小さな食事処だ。騒がしいのは嫌いで、そこで好きに飲んでいる。既に三杯目、いい感じにタガが外れた。 「大丈夫ですか? 赤くなってますよ」 「煩い」  そんなの分かっている。俺はそんなに酒に強くない。後二杯も飲めば眠くなるし意識が浮き上がる。直ぐに肌に出るから、周囲だってそのくらいで止めるんだ。 「貴方は、頑張っていますよ」 「知ったように…」 「まぁ、そうですけれどね。でも、付き合いが短くても貴方の事を見ていれば分かります。部下思いで、真面目で、真っ直ぐな人です」  そんな、聖人君子みたいな奴じゃない。グラスを揺らすと、氷がカランと音を立てる。それを見ながら、息を吐いた。 「クズだ」  結局、そうだ。部下の異変にも気づけなかった。多くの仲間を失ってしまった。そして今、職責というものを放棄してきた。 「…俺の母親は魔人族で、父親が狐だ」  グラスの中身を一気に空けて、同じ物を頼む。止めようとしたランセルを手で制して、ただ胸の中にある重たいものを吐き出すように口にした。     
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