しがみついていた物がゴミ屑だと知った日

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「母の特性を継いだ俺は、親父の親友が軍事総長だってのもあって、直ぐに軍部に入る事が決まった。13で軍の寄宿学校に入って、15で見習い、17で一般兵に上がって、20で小隊の隊長になった。そして25で砦持ちだ」 「随分、駆け足ですね」 「あぁ、全くだ。脇目も振らずに走ってきた。よそ見もしなかった。同じ花紋持ちがパートナーを見つけて養ってもらうのを尻目に、俺は自分で歩こうとしていた。ずっと、走ってきた。高い所へと憧れて、理想を見てきた」  上に行けばもっと出来る事が増える。肉食族以外の戦闘員は扱いが酷いのも知っていたから、そういう奴らの助けにもなりたかった。俺も、王道からは外れているから肩身が狭かった。  馬鹿にされて、後ろ指を指されて、でも媚びたりはしなかった。バカにする奴を正当に打ちのめし、実力を示す事で道を切り開いてきた。  だが、いざ辿り着いた上は憧れや希望などまったくない、血筋や部族に利権と金が絡み合った、軍人とは思えない奴らの巣窟だった。 「…俺は、何を目指して、何に期待して生きてきたんだろうな」  四杯目のグラスが空く。頭の中が、どこかふわりとしていた。  そして惨めだ。結局何も変える事などできないまま、今責任も放り出した。明らかな負けだ。 「抗えないものだって、ありますよ」     
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