1226人が本棚に入れています
本棚に追加
…国境、騒がしくならなかっただろうか。
竜人は竜化できる。コイツは緑竜だから、緑色の竜だろう。だが、基本それで国境を跨ぐことは大変な非礼であり、犯罪に近い。だがどうやら、コイツはそのタブーを犯して俺を拉致ったらしい。
頭が痛い。
「あの、二日酔いでしたら薬お持ちしましょうか?」
「その頭痛ならとっくの昔にどっか飛んだ!」
まったくもって分からない様子で、むしろ可愛さを装ってコテンと首を傾げるアホに、俺は怒鳴ったり溜息をついたりと忙しかった。
「帰せ」
「なぜです?」
「俺には俺の生き方ってものがあるからだ」
「迷ってらしたのに?」
「それを含めて俺の生き方だ。第一、俺がこれからをどうするかをお前が決める権限がどこにある」
「うーん……愛しているので攫いました。貴方のこの後の人生を丸っとください。そして私の子を産んでください」
あ……ダメだ、話が通じない。どうして言葉を解するのに会話が出来ないんだこの男。
ここに来て心が折れそうだ。A級やS級のモンスターと対峙した時だって挫ける事のなかった心が折れそうだ。竜は上級モンスターだな。コイツはそういうものか。
最初のコメントを投稿しよう!