ジェームベルト第二国軍宿舎

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 …国境、騒がしくならなかっただろうか。  竜人は竜化できる。コイツは緑竜だから、緑色の竜だろう。だが、基本それで国境を跨ぐことは大変な非礼であり、犯罪に近い。だがどうやら、コイツはそのタブーを犯して俺を拉致ったらしい。  頭が痛い。 「あの、二日酔いでしたら薬お持ちしましょうか?」 「その頭痛ならとっくの昔にどっか飛んだ!」  まったくもって分からない様子で、むしろ可愛さを装ってコテンと首を傾げるアホに、俺は怒鳴ったり溜息をついたりと忙しかった。 「帰せ」 「なぜです?」 「俺には俺の生き方ってものがあるからだ」 「迷ってらしたのに?」 「それを含めて俺の生き方だ。第一、俺がこれからをどうするかをお前が決める権限がどこにある」 「うーん……愛しているので攫いました。貴方のこの後の人生を丸っとください。そして私の子を産んでください」  あ……ダメだ、話が通じない。どうして言葉を解するのに会話が出来ないんだこの男。  ここに来て心が折れそうだ。A級やS級のモンスターと対峙した時だって挫ける事のなかった心が折れそうだ。竜は上級モンスターだな。コイツはそういうものか。     
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