ジェームベルト第二国軍宿舎

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 つまり、ここを出る方法はあいつを説き伏せるしかないということだ。竜じゃないんだ、瞬時に空に逃げる事も国境を越える事もできない。  しかも相手が王子だと? しかも軍を大々的に動かせる立場だと? この国大丈夫か。あのイカレトカゲに全権預けるなんてバカなのか。  俺の思うところが察せられるのか、ハリスは肩を落として「ご愁傷様っす」と言う。その気遣いは正直いらない。 「この軍、大丈夫か」 「そこは平気っす。あの人のこんな姿、これが初めてっすよ」 「ん?」  ハリスがヘラヘラ笑いながら言う。それに、俺は実に疑問だ。この様子では、今まではまともだったようだ。 「グラース様だけっすよ、あの人があんなに崩れるの。だからもう、最近気持ち悪くって! 上司の意外すぎる一面としては衝撃大きすぎて、正直受け止めきれないっす」  つまり、以前はこうではなかったと…。  だがそれも納得はする。仕事の時のあいつは確かに性格は悪いが有能だ。そこは俺も認める。  ハリスはそれでも笑っている。少し楽しそうなのが癪に障るが。 「まぁ、病気みたいなもんっすね」 「俺はどうなる」 「…ご愁傷様っす」 「つまり、諦める事がないんだな」  ここから出なければ。思う反面、出た所でゆく場所がない。     
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