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「子供を産んでくれ」と、あいつは言った。あいつは俺に、子を産むように必ず迫る。つまりは、自分で選んだ奴が相手なら萎えない。その程度だろう。
妙に冷めた。俺も所詮はあいつが子供を作るための道具の一つだ。多少好みだった、そういうことだ。全く気のない相手よりはマシなのだろう。
「あの、グラース様?」
「悪い、少し考えたい。席を外してくれ」
不審そうな顔をしながらも、ハリスは俺の意見を尊重して席を外した。
俺は、妙な虚しさを感じていた。少しは親しくなれたのだと思っていた。
確かにあいつはイカレている。変態だとも思う。それでも、信頼はしていた。あいつがいたから砦で起こった事件は早く解決した。愚痴にも付き合ってくれた。軍人としてのあいつを、認めていた。
だが、それは俺ばかりだったのだろう。好みだから子供を産めとは、俺には理解できない。そんな事をうっとりと言われても俺には理解ができない。あいつは、何も語らない。
気分が沈み込む。軍を抜けてきた時よりも、自分があいつにとって子を産ませたい道具だと知った今のほうが最悪だ。
膝を抱え、俺はこの後を考える。俺は、どこで何がしたい…。
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