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どんどん、壊れていくように思う。だが俺にはそのように聞こえた。
コイツは何も言わない。大事であるはずの事を言わないんだ。
とても簡単に「好き」と言い、「子供を産んでくれ」と言う。
だが、そうじゃないだろ。どうしてそうなるのか、俺は分からないんだ。
立ち上がったランセルは俺の側に立つ。その目はまるで狂気だった。
「私はそのような気持ちで貴方をここに招いたわけではありません。貴方の事が好きなのです。だから、離れたくないのです」
「では、お前は俺の気持ちや感情を問うたか? 俺がお前をどう思っているか、気にしたか?」
きっと、していない。自らの感情を押しつけているようにしか感じない。睨み付けるその表情が、痛々しくなる。
突然、顎を捕らえられて深く唇が触れた。咄嗟に逃げられなかった。
だが同時に、何かが違う。体の中を魔力が流れ、そしてかけていたはずの魔力のストッパーが外された。
「!」
「…嫌っている事は、分かっていました。だから連れてきたんです。ここを逃せば、きっともう道は交わらない。旅に出る? そんな事したら、私は貴方を追えないじゃないですか」
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