熱に触れて、君を感じる

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熱に触れて、君を感じる

 俺の器を持っている男、おそらくランセルの父親、緑竜の王は俺を手元から離さなかった。それは就寝時間までそうだった。眠るときでさえ、何やら特別な箱に入れられた。  途端、世界は薄闇に沈んだ。  体の感覚が掴めない。試しに爪を立ててみたが、良く分からなかった。 「開けろ! 出せ!!」  何度も何度も鏡を叩いたが、びくともしない。もう何度も、数え切れないほど叩いているんだ。普通、生身でこんな事をすれば叩いた手がうっ血して痛みを発するだろう。だが、そうはならなかった。  ズルズルと、鏡を叩くままに崩れ落ちていく。  このまま、俺はどうなる。このまま、あいつはどうなってしまうんだ。  ランセルが、壊れていく。憎悪するほどの事を、させてしまう。  俺のせいだ。どうしてあの時、俺は逃げなかった。いや、もっと前に離れるべきだったんだ。 「すまない、ランセル…すまない…」  こんな姿になっても消えない感情の波に、俺は詫び続けている。  感覚が、感情が消えてしまえば楽だった。見なくていいなら、知らないままなら……それでも、あいつに強いる事は同じだ。俺の罪は消えない。  泣けるものなら、泣いただろう。だが魂ばかりのこの体から、涙が流れることはなかった。
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