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【微エロ】焔の花紋に触れる唇
砦は火が消えたように静かだ。
圧倒的に人の少ない砦の中は、日中の慌ただしさが嘘のようだ。
それを感じながら、俺は私室に引っ込んだ。あまり人前に出ていると感情が出てしまいそうで避けた。
いつ動く。深い呼吸を意識的に繰り返している。こんなに落ち着かない気持ちになったのは、初めてだ。
その時、耳に僅かに音が聞こえる。遠い。ここから三キロはある。
「隊長!」
ハルバードの声に俺は立ち上がり扉を開けた。焦った顔の奴は、オロオロと俺を見た。
「どうした」
「敵襲が! 既に人を向かわせています!」
「分かった、先に行ってくれ。動ける人数であたり、逃がさないように囲んでくれ。村人の保護と怪我人の救護も忘れるな。お前に指揮を任せる」
「隊長は」
言いかけたハルバードの肩を俺は一つ叩いた。
察しろ。これだけで、この男の動揺は消えて何かを殺し、確かな表情で頷く。
本当に、優秀過ぎる…俺には過ぎた部下だ。
ハルバードは直ぐに動き出し、バタバタと砦から人がいなくなった。100人くらいは余裕で生活できる砦の中に残っているのは、おそらく10人強くらいだろう。
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