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その⑥の続き
。「第五中足骨折」と聞くと、厳めしいけれど、千鳥足のお父さんが酔っぱらってこけるコント場面のよくある小指へと続く途中の骨の単純骨折。
看護師の手を借りて車椅子に移動し病棟内を案内してもらった。自分の居場所は、J病院、8階、4人部屋と分かった。案内されている内に昨晩の医師が気になり聞いてみた。すると看護師は不思議そうな顔をして、「夜間のの救急搬送で意識朦朧としている患者さんにそんな話をする人はいないと思います」とカラーコンタクトで大きくなっている瞳をさらに大きくして笑った。「それより、近松さんの眼鏡は壊れていなくって、ラッキーでしたね」と続けた。その時、初めて私は自然と眼鏡をしている自分を意識した。まだ新調したばかりのそれはフレームの歪みを感じさせる程度だった。「頭から突っ込んだんだからもしかして顔?」と気づき、鏡を見ると額と目の周りが紫色に腫れていた。看護師はのんきに「打ち身だから1か月も経てば良くなりますよ。目を傷つけていないなんて、ホント、ラッキー」とまた笑った。
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