おに、おか、おと

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 諍いの声が大きくなった。ヒヤヒヤしがら彼らの様子を窺っていると、店のドアが開く音がした。ニッカポッカを履いた図体のでかい若い男が中に入って来る。優奈は壁谷たちから視線を引きはがした。いらっしゃいませ、と声をかけると、男はちらりと優奈を見て、一拍置いてから眉を上げて少し笑った。 「高校生? コンビニのバイトって大変だよね。揚げ物とか、宅急便の受付とかさあ」  フレンドリーに話しかけてくる。こういうことは、よくある。自分の容姿がそこそこ良いことを優奈は自覚していた。高校生だと思われたことも少し嬉しい。笑顔を維持しながら、そこまで大変じゃないですよ、と答えた時、女の声が被さった。 「太ったらどうすんのよ!」  優奈の意識はまた、トイレの前でやり取りしているふたりに向かった。 「そんなの俺には関係ありません。あなたが太ろうが痩せようが」  壁谷が冷たく言い放った。いつもの優しい先輩店員のイメージとはずいぶん違う。 「あの女、さっきここの近くの公園で見たよ。ベンチで大量に何か食ってた」  声を潜めて、ニッカポッカの男が言う。優奈は彼に相槌を打ちながら、女性が怒ったように軍隊歩きで出口に向かうのを目で追った。  ふいに彼女が顔を上げ、優奈を睨みつけてきた。 「見てんじゃねえよ、デブ!」  耳がキーンとなるほどの大声で罵倒される。優奈は思わず顔を引き攣らせた。  彼女はぷいっと顔を背けた。最後は小走りになりながら、陽光の差すガラスドアを押して外に出て行った。 「なんなんですか、あの人」     
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