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エラが張っているせいで、顔が大きく見えるのだ。輪郭は直しようがないが、肉を減らせば顔がシュッとするような気がする。
「気にすることないわよ。ダイエットなんてしないでよ、あんたの年で――」
「ダイエットすると拒食症になるんでしょ」
さっきの骸骨ほどではないが、ちょっと痩せすぎじゃない? と見ていて心配になる生徒が同じ学部にいる。
手を動かすのをやめて、摂食障害の怖さを語る母の顔は、上品な卵型だ。エラも張っていない。
「お母さんは、顔の形はいいよね」
「は、って。あとは良くないっての?」
細い目を余計細めて、母が怒った振りをする。
「だって、目は羨ましくない」
優奈は、自分の大きな目とくっきりした二重瞼が気に入っていた。これのお陰で、可愛いと言われることが多いのだ。
「お父さんに似てよかったわね」
口を尖らせて母が言うので、優奈は「まあね」と返して話を切った。これ以上母の機嫌が悪くなるのも困る。
「あ、優奈。頼んでたDVDが届いたわよ」
母が床に置かれた段ボール箱を指さした。
「あとで見る」
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