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発表の日の朝。 誰もいない部室に射し込む朝日が部屋の埃に当たってきらきらとしている。 私は雑巾片手に奥の保管棚を拭き始めた。 そこに並ぶ、沢山の透明なケースには年代順にフィルムや台本等の資料が入っている。 うわ。 結構埃、たまっちゃったな。 ケースから見える、インデックスのセピア色は時の流れを伝えてくれる。 わ。これ、日付が昭和。 沢山の作品。 私達と同じく、出来る限りの努力で叶えて来たモノ達なんだろう。 その一つ一つの熱量が、何だか愛しく感じて私は丁寧に拭き浄めた。 小さくカラカラと扉の音が聞こえて振り返ると、部長が驚いた顔をしていた。 「おはよ。 ……掃除、してくれてたんだ」 「大した事してないけどね。 埃、舞ってたから棚だけ拭いてみた」 部長が、右下のケースを指差した。 そこには、去年の学祭のビデオと撮影資料。 「あれの、右隣に最後の作品が収まるんだな」 ケースは、45個。今日のが追加されたら、46。 46本分に詰まった想いを感じたら、不意に目頭が熱くなった。
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